『大鏡』花山天皇の出家を品詞分解!現代語訳と文法を完全網羅
古典文学の傑作『大鏡』において、政治サスペンスの白眉として知られる「花山院の出家(寛和の変)」。高校古典の定期テストや大学入学共通テストにおいて、助動詞の識別や敬語の方向性を問う頻出題材として毎年多くの受験生が向き合う最重要単元です。最愛の女性を亡くした若き天皇の純情と、それを利用して権力を掌握しようとする藤原兼家・道兼親子の冷徹な謀略が見事な筆致で描かれています。
しかし、実際の本文読解では「敬語が入り組んでいて主語が掴めない」「助動詞や助詞の活用形が正確に判別できない」といった悩みが絶えません。本記事では、原文の緻密な品詞分解とわかりやすい現代語訳を軸に、試験で狙われる文法トラップや歴史的背景を完全網羅して解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「花山院の出家」の重要シーンを文節・単語ごとに分解し、品詞・活用形・助動詞の意味を徹底解説。
- 要点2:藤原兼家・道兼(粟田殿)による「寛和の変」の心理戦と、複雑な敬語の敬意の方向(主体・客体)を完全図解。
- 要点3:定期テストや共通テストで問われる係り結び・助動詞の識別ポイントを網羅し、最短で得点力へ直結させる読解ノウハウを公開。
【完全網羅】『大鏡』花山天皇の出家|重要箇所の品詞分解と現代語訳
まずは試験で最も出題されやすい主要場面について、原文、品詞分解、現代語訳をセットで確認していきます。自力で品詞分解ができるよう、助動詞の活用形と意味、助詞の役割に注目してください。
場面1:宮中を出る決意と夜の出発(冒頭部)
【原文】
花山院の御時は、寛和二年丙戌の夏五月下旬のころ、夜うち更けて、御出家ありけり。あはれなることは、弘徽殿の女御の御身まかりたまひて後、御心にとどまりて、世の中を思し召しとどむる気色もなかりけり。
【品詞分解】
- 花山院:名詞
- の:格助詞(連体修飾)
- 御時:名詞(接頭語「御」+名詞「時」)
- は:係助詞
- 寛和:名詞(元号)
- 二年:名詞
- 丙戌:名詞(干支:ひのえいぬ)
- の:格助詞
- 夏:名詞
- 五月:名詞
- 下旬:名詞
- の:格助詞
- ころ:名詞
- 夜:名詞
- うち更け:カ行下二段活用動詞「うち更く」の連用形
- て:接続助詞
- 御出家:名詞(接頭語「御」+名詞「出家」)
- あり:ラ行変格活用動詞「あり」の連用形
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形
- あはれなる:ナリ活用形容動詞「あはれなり」の連体形
- こと:名詞
- は:係助詞
- 弘徽殿の女御:名詞(藤原忯子)
- の:格助詞(主格)
- 御身まかり:ラ行四段活用動詞「まかる(死ぬ意の謙譲・婉曲語)」の連用形に接頭語「御身」がついた形
- たまひ:補助動詞・ハ行四段活用「たまふ」の連用形(尊敬語)
- て:接続助詞
- 後:名詞
- 御心:名詞
- に:格助詞
- とどまり:ラ行四段活用動詞「とどまる」の連用形
- て:接続助詞
- 世の中:名詞(男女の仲、または俗世間・政治)
- を:格助詞
- 思し召しとどむる:マ行下二段活用動詞「思し召しとどむ」の連体形(最高敬語的複合動詞)
- 気色:名詞(様子、気配)
- も:係助詞
- なかり:ク活用形容詞「なし」の連用形
- けり:過去・詠嘆の助動詞「けり」の終止形
【現代語訳】
花山院の御代のこと、寛和二年(986年)丙戌の初夏五月下旬のころ、夜がすっかり更けてから、(花山院は)御出家なさった。しみじみと悲しいことには、弘徽殿の女御(藤原忯子)がお亡くなりになってから、そのことが御心から離れず、俗世に御心を留めようとなさる様子もまったくおありにならなかった。
場面2:月明かりとためらい、道兼の催促
【原文】
月隈なくあかるきに、「いかでか顕るまじき」と仰せらるるを、粟田殿、「さりとて、とどまらせたまふべき御運にはあらず」と奏したまひて、手を取りて引き出だしたてまつりたまふ。
【品詞分解】
- 月:名詞
- 隈なく:ク活用形容詞「隈なし」の連用形(陰りがない)
- あかるき:ク活用形容詞「あかるし」の連体形
- に:接続助詞(〜ところ・〜ので)
- 「いかでか:副詞「いかで」+係助詞「か」(反語:どうして〜だろうか、いや〜ない)
- 顕る:ラ行下二段活用動詞「顕る(露見する)」の終止形
- まじき」:打消推量の助動詞「まじ」の連体形(「か」の結び)
- と:格助詞(引用)
- 仰せらるる:ラ行下二段活用動詞「仰せらる」の連体形(最高敬語:おっしゃる)
- を:接続助詞(〜ところ)
- 粟田殿:名詞(藤原道兼)
- 「さりとて:接続詞(そうかといって)
- とどまら:ラ行四段活用動詞「とどまる」の未然形
- せ:使役・尊敬の助動詞「す」の連用形(尊敬)
- たまふ:補助動詞・ハ行四段活用「たまふ」の終止形(尊敬)
- べき:当然・適当の助動詞「べし」の連体形
- 御運:名詞
- に:格助詞
- あら:ラ行変格活用動詞「あり」の未然形
- ず」:打消の助動詞「ず」の終止形
- と:格助詞(引用)
- 奏し:サ行変格活用動詞「奏す」の連用形(天皇に対する謙譲語:申し上げる)
- たまひ:補助動詞・ハ行四段活用「たまふ」の連用形(尊敬語)
- て:接続助詞
- 手:名詞
- を:格助詞
- 取り:ラ行四段活用動詞「取る」の連用形
- て:接続助詞
- 引き出だし:サ行四段活用動詞「引き出づ」の連用形
- たてまつり:補助動詞・ラ行四段活用「たてまつる」の連用形(謙譲語:お〜申し上げる)
- たまふ:補助動詞・ハ行四段活用「たまふ」の終止形(尊敬語)
【現代語訳】
月が隈なく照り輝いているので、(花山院が)「どうして人に見つからないことがあろうか(いや、見つかってしまう)」とおっしゃるのを、粟田殿(藤原道兼)は、「そうかといって、出家を思いとどまりなさることができるような御運勢ではございません」と(天皇に)申し上げなさって、手を取ってお連れ出し申し上げなさる。
場面3:元慶寺での剃髪と道兼の裏切り
【原文】
花山寺におはしまし着きて、御髪下ろさせたまひて後、粟田殿、「まかり出でて、父大臣に見え、かくと申し侍りて、まかり参らむ」と申し給へば、
【品詞分解】
- 花山寺:名詞(元慶寺のこと)
- に:格助詞
- おはしまし着き:カ行四段活用動詞「おはしまし着く」の連用形(尊敬語:お着きになる)
- て:接続助詞
- 御髪:名詞(みぐし:お髪)
- 下ろさ:サ行四段活用動詞「下ろす」の未然形
- せ:尊敬の助動詞「す」の連用形
- たまひ:補助動詞・ハ行四段活用「たまふ」の連用形(尊敬語)
- て:接続助詞
- 後:名詞
- 粟田殿:名詞
- 「まかり出で:ダ行下二段活用動詞「まかり出づ」の連用形(退出するの謙譲語)
- て:接続助詞
- 父大臣:名詞(藤原兼家)
- に:格助詞
- 見え:ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の連用形(姿を見せる、対面する)
- かく:副詞(このように)
- と:格助詞
- 申し:サ行四段活用動詞「申す」の連用形(謙譲語)
- 侍り:ラ行変格活用動詞「侍り」の連用形(丁寧語:〜ます)
- て:接続助詞
- まかり参ら:ラ行四段活用動詞「まかり参る」の未然形(参上するの謙譲語)
- む」:意志の助動詞「む」の終止形
- と:格助詞(引用)
- 申し:サ行四段活用動詞「申す」の連用形(謙譲語)
- 給へ:補助動詞・ハ行四段活用「たまふ」の已然形(尊敬語)
- ば:接続助詞(順接確定条件:〜ので / 〜ところ)
【現代語訳】
花山寺(元慶寺)にお着きになって、(花山院が)御髪をお下ろし(剃髪)になられた後、粟田殿が、「いったん退出いたしまして、父の大臣(兼家)に対面し、事情をこのように申し上げましてから、(再びここへ)参上いたしましょう」と申し上げなさったところ、

定期テスト・共通テスト頻出!重要助動詞の意味と係り結びの法則
『大鏡』「花山院の出家」の設問で最も点差がつくのが、助動詞の識別と係り結び構文の訳出です。特に道兼の言葉巧みな台詞や、語り手(大宅世継)の心情表現に含まれる文法構造を正確に見抜く必要があります。
1. 「る・らる」「す・さす・しむ」の識別(尊敬 vs 受身・自発・使役)
本文では最高敬語(二重尊敬)が頻出します。「仰せらるる」「下ろさせたまふ」「出でさせおはしまし」など、動詞に助動詞「す」「さす」「らる」が接続する形です。
- 「仰せらるる」:「仰す(動詞)」+「らる(尊敬の助動詞)」の連体形。天皇に対する絶対敬語として機能します。受身や自発と混同しないよう注意が必要です。
- 「下ろさせたまふ」:「下ろす(動詞・未然形)」+「せ(尊敬の助動詞)」+「たまふ(尊敬の補助動詞)」。天皇自らが髪をお剃りになる(=出家する)動作を高める二重尊敬です。兼家が剃らせたという「使役」ではありません。
2. 「べし」「まじ」の意味判定
花山院と道兼の緊迫した心理戦では、推量・当然・打消の助動詞が決定的な意味を持ちます。
- 「いかでか顕るまじき」:「まじ」は打消推量(〜ないだろう)。係助詞「か」と呼応して反語表現「どうして見つからないだろうか、いや見つかってしまう」となります。
- 「とどまらせたまふべき御運にはあらず」:「べし」は可能または当然(〜できる / 〜はずである)。道兼が「今さら出家を止めることなどできない運命です」と天皇を追い詰める論理展開です。
3. 係り結びの法則と強調構文
本文中には「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」による係り結びが随所に登場します。特に結びの流れが接続助詞で途切れる「流れ」の現象や、文末が省略されるパターンに警戒してください。
| 文法項目・用例 | 識別・活用形の詳細 | 出題頻度と難易度 | 編集部の読解アドバイス |
|---|---|---|---|
| いかでか顕るまじき | 「か(係助詞・反語)」+「まじき(打消推量・連体形)」 | 頻出度:★★★★★ 難易度:中 | 「いかでか〜連体形」で反語。「姿が見つかってしまう」という天皇の不安を捉える。 |
| 引き出だしたてまつりたまふ | 「たてまつり(謙譲・連用)」+「たまふ(尊敬・終止)」 | 頻出度:★★★★★ 難易度:高 | 敬語の二重構造。動作主(道兼)への尊敬と、客体(花山院)への謙譲の併用。 |
| まかり出でて…まかり参らむ | 接頭語「まかり(謙譲・丁寧)」+動詞+「む(意志・終止)」 | 頻出度:★★★★☆ 難易度:中 | 道兼が天皇を安心させるための嘘の台詞。「まかり」は退出・参上の謙譲表現。 |
| あさましく野分などの〜 | 「あさましく(シク活用形容詞・連用形)」=驚きあきれるほど | 頻出度:★★★☆☆ 難易度:低 | 古文単語「あさまし」の基本義「驚きあきれる」を忠実に訳出することが肝要。 |
敬語の識別で差がつく!誰から誰への敬意かを完全図解
古典読解において最大の関門となるのが「敬語の主客判定」です。『大鏡』は歴史物語であり、老人の語り手(大宅世継ら)が聞き手に対して語る「地の文」と、登場人物同士の「会話文」が交錯します。
1. 地の文における敬意の方向
地の文で使われる敬語の主体(敬意を払っている人)は、すべて語り手(大宅世継 / 筆者)です。
- 最高敬語(せたまふ / させたまふ / おはします)の客体:常に花山天皇(花山院)に向かいます。当時、在位中の天皇および太上天皇に対する敬意は絶対的でした。
- 通常の尊敬語(たまふ)の客体:藤原道兼(粟田殿)や藤原兼家など、高位の貴族に対しても敬意が払われます。
2. 会話文における敬意の方向
道兼が花山天皇に対して語る場面では、徹底したへりくだりと奏上の形式が取られます。
- 「奏したまふ」:「奏す」は天皇・上皇に申し上げる専用の謙譲語(道兼から天皇への敬意)。それに語り手から道兼への尊敬語「たまふ」が付いています。
- 「まかり出でて…申し侍りて…まかり参らむ」:道兼が自分の動作をへりくだる謙譲語(まかる・申す)と、聞き手である天皇への丁寧語(侍り)を用いています。道兼は出家を裏切る直前まで、完璧な臣下の礼を取り繕っていたことが文法からも読み取れます。

寛和の変の真相|花山天皇の出家理由と藤原道兼・兼家の謀略
品詞分解と文法を真に理解するためには、この事件が平安中期の宮廷社会に巻き起こした政治的激震の構図を知る必要があります。
1. 花山天皇が出家を決意した「真の理由」
当時19歳の花山天皇は、寵愛していた女御・藤原忯子(ふじわらのよしこ / 弘徽殿の女御)を懐妊中に病で亡くしました。天皇の嘆きは尋常ではなく、食事も喉を通らないほどの鬱状態に陥ります。仏教に救いを求め、「出家して忯子の菩提を弔いたい」と激しく願うようになった心の隙を、政治的野心に燃える藤原兼家一族が見逃すはずはありませんでした。
2. 藤原兼家・道兼親子の冷徹なシナリオ(寛和の変)
右大臣・藤原兼家にとって、花山天皇は自らの外孫ではないため、早期に退位させたい邪魔な存在でした。兼家の外孫である懐仁親王(のちの一条天皇、当時7歳)を即位させれば、兼家自身が「摂政」として権力の頂点に立てるからです。
そこで兼家は、天皇の側近(蔵人頭)として仕えていた三男の藤原道兼(粟田殿)を刺客として送り込みます。道兼は「私も御一緒に出家してお仕えいたします」と甘言を弄して天皇を元慶寺へ連れ出し、天皇が髪を剃り落とした瞬間、「父に姿を見せてから出家します」と言い残して逃亡しました。その夜のうちに兼家は三種の神器を皇太子のもとへ移し、クーデター(寛和の変)を電撃的に完遂したのです。
【実態検証】受験生がつまずく誤読の盲点と古典読解の鉄則
受験指導の現場や大手模試の採点データから見えてくるのは、現代語訳の丸暗記に頼った受験生が「主語の取り違え」で壊滅的な失点を喫するケースです。
盲点1:「粟田殿、さりとて…」の主語を花山天皇と誤認する
月明かりに怯えて出家をためらう天皇に対し、「さりとて、とどまらせたまふべき御運にはあらず」と告げるのは道兼です。ここを天皇自身の台詞と勘違いすると、その後の物語全体の因果関係が崩壊します。「奏したまふ(天皇に申し上げる)」という謙譲語の存在が、発話主が臣下(道兼)である動かぬ証拠です。
盲点2:道兼の逃亡理由を「親孝行の美談」と誤読する
道兼の「父大臣に見え、かくと申し侍りて」という台詞は、一見すると「出家前に親へ挨拶に行く孝行息子」の言葉に見えます。しかし文脈と歴史的事実を照らし合わせれば、これは天皇を欺くための「計画された脱出口実」です。助動詞「む(意志)」を使った道兼の嘘の約束と、それに取り残された花山院の悲哀の対比を読み取ることが記述問題での高得点につながります。
【プロの結論】古典文法を丸暗記で終わらせない「構造的読解力」の習得法
古典を単なる暗記科目として処理していると、共通テストのような初見テキストの応用問題には太刀打ちできません。『大鏡』を読む際は、常に「誰が誰に対して敬語を使っているか」という人間関係の力学(パワーバランス)を意識してください。文法構造(助動詞・敬語・助詞)は、登場人物たちの嘘や本音、心理的駆け引きを浮かび上がらせるための精密なコード(暗号)なのです。

【花山天皇の出家 品詞分解】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:道兼の「まかり出でて」に使われている「まかり」とは何ですか?
A1:動詞「出づ(出る)」の前に付く接頭語的な役割を持つ謙譲・丁寧表現です。宮中や貴人のもとから「退出する」という意味をへりくだって表します。天皇の前から立ち去る口実として使われています。
Q2:「あはれなること」の「あはれなり」はどのようなニュアンスで現代語訳すべきですか?
A2:単純に「面白い」ではなく、「しみじみと悲しい」「心に深く染み入るほど同情を誘う」と訳します。若くして最愛の女御を失い、騙されて出家させられた花山天皇の数奇な運命に対する語り手の深い哀悼が込められています。
Q3:定期テストや共通テストで「敬語の識別」を素早く解くコツは?
A3:まず「地の文か会話文か」を分けます。地の文なら主語は語り手、最高敬語なら対象は天皇です。会話文なら「誰が話しているか」を特定し、「奏す(天皇へ)」「啓す(中宮・皇太子へ)」「申す(一般貴族へ)」といった専用動詞の有無を確認するのが最短の解法ルートです。
Q4:なぜ藤原道兼は「粟田殿(あわたどの)」と呼ばれているのですか?
A4:道兼が京都の粟田口(現在の東山区粟田口周辺)に邸宅を構えていたことに由来します。平安時代の貴族は、官職名のほかに邸宅の地名を冠して呼ばれることが一般的でした。
まとめ:『大鏡』花山天皇の出家をマスターして古典を得点源にする
『大鏡』「花山院の出家」は、助動詞の識別、係り結び、敬語の主客判定という古典文法の重要要素が凝縮された珠玉のテキストです。文法の一つひとつを丁寧に品詞分解し、藤原兼家・道兼親子の政治的野心と花山天皇の悲劇という歴史のダイナミズムを重ね合わせることで、無味乾燥な暗記は鮮やかなストーリー理解へと変わります。
今回解説した品詞分解表と文法ポイントを繰り返し復習し、定期テストでの満点獲得、そして共通テスト古典での高得点奪取へつなげてください。 (出典: 花山 天皇 の 出家 品詞 分解(Yahoo!ニュース))